温浴指南ADVISOR COLUMN

  • ADVISOR2020.12.21

     サウナが大ブームとなっている中、新型コロナウイルス感染症の流行によりブームに水を差されている状況になっています。温浴施設では構造的に一定の空間に人が密集しやすく、温浴・サウナ施設ではコロナの感染リスクはどうなの?と不安に思って利用を控えている利用者も多いのではないでしょうか?温浴・サウナは健康につながるエビデンスも多く報告されており、愛好者も非常に多いですのでコロナ禍での温浴・サウナ控えは勿体ない!

     適切な対策を行えばコロナ禍でも大好きな温浴・サウナに入れますので、その考え方、要点を説明したいと思います。

     まず大前提として、新型コロナウイルス感染はどんなに対策しても感染リスクはゼロにはなりません。重要なのは社会全体で見たときに医療が対応できる枠を超えて感染症が広まらないようにすることです。そのためには、新型コロナウイルス感染症対策が社会前提にきちんと浸透する必要があります。現実的なゴールは『以前のような経済活動を行っても新型コロナウイルス感染症感染者数が医療の限界を超えない』と言うことです。その為には、温浴施設はもちろんのこと、利用者も一体となり新型コロナウイルス感染症対策を行うことが必要です。

     温浴施設での新型コロナウイルス感染症対策を進めるために、私が代表を務める日本サウナ学会では『サウナ・温浴施設のために新型コロナウイルス感染防止ガイドライン』を医師、弁護士、医療関係者、とともに策定し公開しました。さらに感染症対策を徹底するために施設の職員向けに新型コロナウイルス感染症についての基礎的な知識、具体的な感染症対策を伝えるためのオンラインセミナーを行いました。合計100名を超える温浴施設関係者に受講して頂くことができました。さらに各施設のコロナ対策を紹介する動画を作成して頂きYouTubeで公開しました。これは、コロナ対策をキチッと行うことはコストであると同時に利用者に安心を与える『長所・アピールポイント』であり他施設との差別化を図れるチャンスでもあります。ピンチをチャンスに変えるためには、キチッと対策をしている施設を広くP Rすることが必要です。そこでYouTube動画を公開し日本サウナ学会HPに施設一覧を作成し、i-phoneアプリ『湯の国』、週刊モーニング(講談社)の巻頭カラー記事に掲載してもらうなど積極的にメディアへのPRを行っています。

     しかしここまでしても、実際に新型コロナウイルス感染症対策を行うと、施設利用者から苦情が入ることがあります。つまり、利用者にコロナウイルス感染症対策の意識が浸透しきっていないということです。そこで『マンガ サ道』(講談社モーニング掲載)の作者であるタナカカツキさんにイラストを依頼し、利用者に向けて新型コロナウイルス感染症対策を啓蒙するポスターを作成し温浴施設向けに日本サウナ学会の会員・非会員問わず無料配布しています。啓蒙ポスターは字ばかりの事が多く、掲載してもほとんど見てもらえないので、多くの人に見てもらえるように、タナカカツキさんの絵の力をお借りして、なるべく字を減らすことに留意しました。少しでも社会、いやサ会、のお役に立てれば嬉しいです。

     このように日本サウナ学会は、コロナウイルス対策だけでなく、サウナの健康効果や安全で適切なサウナ浴法の啓蒙などを行い、またサウナに関連する医学研究を行い発信していくために2019年に設立されました。現在、医療は凄まじい速度で進歩している反面、医療費の高額化というジレンマを抱え、皆保険制度を持つ我が国では財政支出の増加により加速度をつけて崩壊に向かっています。したがって、今後は病気の早期発見・予防の方向に医療が進展していくことは明白です。その時に、温浴・サウナ業界が人々を健康にする『医療』の一翼を担う存在であって欲しいと願っています。

     今後、日本サウナ学会では研究・啓蒙活動を通じて温浴・サウナ業界をさらに活性化し、人々を健康にしていくことを使命として活動していきます。

     当学会の志に賛同しご支援くださる方(賛助会員)も募集しております。詳しくは日本サウナホームページをご覧下さい。会員募集のみならず、サウナに関する様々な情報も公開しておりますので併せてご覧下さい。

    日本サウナ学会: https://www.ja-sauna.jp

    加藤 容崇(かとう やすたか)

    慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任助教・医師、北斗病院・医師、日本サウナ学会 代表理事。

    専門は癌の遺伝子検査・研究。「敵は強い方が燃える」というモットーのもと癌の中で最凶の「膵臓癌」を相手に現在も戦い続けている。人間が健康で幸せに生きるために、健康習慣による「予防」が最高の手段だと言うことに気づき、サウナをはじめとする世界中の健康習慣を最新科学で解析することを第二の専門にしている。

    サウナに関する研究を進め医学的効能を明らかにし、人々の健康増進に役立てることを目標に「日本サウナ学会」を設立し、科学技術を用いて本気で「サウナ」の健康効果を追求する団体の代表理事として活動中。プライベートにおいても、大のサウナ好き。